北狄・東夷・南蛮・西戎など、わざわざ東西南北で字を変えているのには、何か理由があるのでしょうか。

「四夷」といいますが、東西南北に異民族を想定する考え方自体は非常に形式的なものです。しかし、当時の中原地方が四方を異文化・異民族に囲まれており、具体的な何かを前にしながら整理されていった概念でもあります。獣を意味する狄・戎は、狩猟や遊牧を生業とする人々を指すと思われます。夷は、大弓を持つ人のことなので、好戦的な部族を意味しているのでしょう。蛮は、虫であり、人間とは認めていないわけです。古代中原の人々の、具体的な世界認識を反映しているとはいえるでしょう。