死者の扱いは、各国間においてもやはり大きな相違が出てくるのでしょうか? それはその国の倫理観を示すことになるのでしょうか。

この狭い日本列島においても、各地域でさまざまな葬儀の方式、死者観の相違があるわけですから、とうぜん各国…というより地域や文化の相違に応じて、さまざまな死者の扱い方があります。そして、イコールでは結べないまでも、それは同地域・文化における倫理観、宗教観と密接に結びついています。例えば、スラブ地域を起点とするヨーロッパでは、「腐敗しない遺体」(偶然にも白蝋化したものなど)を吸血鬼として恐れましたが、逆に仏教化した中国世界では、極楽往生の奇瑞と認識していたりします。同じ現象でも、それを解釈する文化のありようによって、まったく対照的な価値付けがなされるわけです。またそれは、同時代における時間的相違によってももたらされます。現代、肉親の死を悲しむ多くの人々には、中世までは遺棄葬が一般的だったといっても、誰も信用はしないでしょう。