音階や旋律まで詳細に検討してみたわけではありませんが、例えばキリスト教や仏教など、体系化された巨大宗教においては、次第にレクイエムは荘重なもの、いいかえれば抑圧的な音感へ定式化してくるように思われます。それに対して民間のもの、例えば中国少数民族の葬儀で奏でられるリズムが、概して賑やかで騒々しいものですね。まさに「お祭り」というべき印象で、恐らくは祭るべき神霊と送るべき死者との境界が曖昧であり、場合によっては同一の存在だからでしょう。死は悼まなければならないという押しつけが、重々しいサウンドスケープを創り出すのでしょうが、そこには常に何らかの権力が作用しているように思います。