最近話題になっている大津のいじめ自殺の問題で、学校や加害者を批判している人たちも、死者を自己同一化していると考えることができる気がしますが、先生はどうお考えになりますか?

「死者の無念を晴らせ」ということでしょうね。いじめについて、生徒も教員も現場を確認していながらなぜ隠蔽されてしまったのか、その原因、現状の問題点を解明し、今後犠牲者を出してゆかないよう改善を図ってゆくことは、悪いことではないでしょう。注意しなければならないのは、それが死者の名のもとに正当化されているかどうかですね。とくに、自殺した生徒を救うことができなかったという悔恨、後ろめたさを解消するために活動が進められているとすれば、それは趣旨が違うように思います。犠牲者を生み出してしまったという責任はみなが引き受けて、根拠を死者に求めず、自発的な行為として遂行すべきでしょう。