史学科でない人間が歴史を批判的に検証しようとするなら、そのための資料はどのように集めればよいでしょうか。また、「本当はこうなんじゃないか」と思ったとしても、論文を書くわけでないなら、そう思うことにどのような意味があるのでしょうか。

歴史には社会的な機能があります。現在生じている様々な個人的、地域的、国家的、国際的問題は、すべて過去からの時間の流れのなかで、種々の事象が複雑に絡まり合って生じてきたものです。よって、解決の鍵、少なくともその前提は、常に歴史のなかにあります。専門研究者以外でも、歴史を勉強し、そのものの見方や知識を、現代を生き抜くうえで役立ててゆくことはできます。資料集めに関しては、これはあらゆる学問に共通でしょうが、最初はできるだけ専門性の高いもの、もしくは専門の研究者の書いたものを読んだ方がいいでしょう。評論家らが書いた文章は、耳目を惹きつけるので、批判能力が充分でないとかえって危険です。概説や入門書でも、典拠となる史料が挙げられているものがいいでしょう。自分なりに、議論や批判の材料にすることができます。近年は、貴重な史料が、ネット上で画像公開されたり、データベース化されて公開されたりしていますから、利用しようと思えば多くの素材を簡単に揃えられるはずです。歴史学は、基礎的知識、相応のリテラシー能力さえ身に付けば、誰でも始められる学問でもありますので、ぜひ挑戦してみてください。