ギリシア・ローマや中国に比べ、日本の歴史記述が出遅れたのはなぜなのでしょう。史料が残っていないだけなのか、「歴史」への認識が他地域より時間がかかったのか。そもそも「歴史」の捉え方自体が、近代のものと古代とでは、まったく異質のものなのかもしれませんが…。

そう、まさに異なる歴史観を持っていた、ということでしょうね。現在でも民族・民俗世界にままみられることですが、現在の我々のように何年何月に何があった、と逐次的・編年的な記録を必要とする社会は稀で、多くは起源(すなわち神話)と現在という点と点との繋がりさえあればよい、という考え方が一般的です。とにかく、必要性がないからです。逐次的な記録が求められるようになるのは、複雑な組織や機構を運営するためで、国家的なまとまりの成立に関わりがあると考えられています。日本列島における「歴史」の誕生も、古代国家の成立と連動して起きてくるわけです。