『旧約聖書』の楽園追放には、サタンは出てこないと思うのですが。
いやー、ご指摘ありがとうございました。以前、別の講義で西洋の蛇の象徴性も扱ったことがあるので、知ってはいるのですけどね。口がすべってしまうのですね。授業でも訂正しておきます。話の意図としては、西アジア周辺で蛇を再生の象徴と捉える思想が強固にあって、それがユダヤ教の楽園追放神話の基底をなし、サタンの概念の一部も構成するに至る、ということです。エデンの蛇とサタン=悪魔的なものとの間には、1世紀頃にはすでに結びつきが発生し、黙示録類、グノーシス主義などでも同様に考えられていたようです。明確な形で現れるのは、初期ギリシア教父の〈護教教父〉ユスティノス(100〜165?)の思想で、天使であったサタンがアダムとエヴァを堕落させたことにより、神の恩寵を失ったと解釈されていますね。