当時の日本に、王=人間神という考え方は存在していたのでしょうか。

いい質問です。実は、奈良時代以降の「現御神」、すなわち人間でありながら神でもあるという天皇のありようが確定してゆくのは、7世紀末の天武・持統朝においてであって、崇峻の頃には明確ではありません。しかしそれは、自然神よりも上位にある天孫といった意味付けに関してということで、自然と交渉するシャーマンとしての力を有した「祭政一致の王」であることは、大王の基本的な属性のひとつであったと考えられます。日本の天皇制は「現御神」という概念を手に入れることで、神聖不可侵の度合いを強め、王殺しの対象となることを克服したのだといえるかもしれません。