「乙巳の変の演劇性」が、けっきょく何を意味するか分かりません。事件→脚色して演劇として上演→その物語性の強い話を事実として記録、ということでしょうか。

物語の過剰なストーリー性、読むものを意識したダイナミックな展開・舞台設定、散りばめられた漢籍故事との類同性、俳優の存在などを総括して「演劇性」と表現しました。『日本書紀』に掲載される乙巳の変の記事の原型が、宮廷歌舞の背景をなす物語として構築されたのではないか、という想定は、理解していただいたとおりのものです。『春秋左氏伝』の編纂において指摘されている「偶語」の件も含め、今後考察を深めてゆかなければならない問題です。