芸能が歴史叙述のなかで関わってくるのは、単に儒教的な礼楽思想からの影響でしょうか。そもそも、芸能が日本の古代の歴史のなかでどのような役割を担っていたのか、興味があります。

上の回答でも述べたように、共同体に伝わる歴史=神話は、語り部によって伝承され物語られたり、祭祀の場において神事=芸能として上演されたりしてきました。日本列島では、縄文中期頃から舞台のような円形の祭祀場が作られ、そこから土で作られた仮面などが出土することもあり、祖先の神話が神事として上演されていた可能性も指摘されています。中国から礼楽の思想が入ってくる以前から、芸能と歴史=神話との関わりは深かったわけです。しかし、それはあくまで「口頭で語られる」ものであって、「文字で書かれる」ものではありませんでした。