かつては政治的、宗教的意味を強く持った芸能に、娯楽としての意味が強くなったのはいつ頃のことでしょうか。

やはり、室町から江戸にかけてでしょうね。現在の能、狂言、歌舞伎などの基礎が確立される時期です。とくに大名の庇護を受けて座が設けられたり、市中の上演によって民衆化が進むなかで、急速に芸道あるいは娯楽としての色彩を強めてゆきます。しかし現在の能や狂言も、寺社へ奉納する形で上演される際には宗教的色彩を帯びますし、年中行事の祭礼のなかに残っている各地の舞や神楽には、神憑りの体裁で行われるものもあります。やはり芸能の根幹には、神霊との繋がりが強く存在するのでしょう。