授業で紹介された初期の久米歌について、山で網にかかった「鷹等(クチラ)」は、鷹なのでしょうか鯨なのでしょうか。どちらの信憑性が高いと思いますか。

歌や説話というものは生き物です。現在我々がみることができる古代の歌、説話は、文字によって固着された書き物でしかありませんが、本来は歌われる場、語られる場によって、言葉や表現、強調点等を変える、融通無碍な存在であったはずです(歌の引用の後に、「是を来目歌と謂ふ。今楽府に此の歌を奏ふ時は、なほ手量の大き小き、また音声の巨き細き有り」と付記されているとおりです)。ですから、「鷹等」がタカだったのか、クジラだったのかを固定してしまうのは、あまり意味がありません。情況に応じて、どちらでも語られうるものであったとすべきでしょう。