おん祭りで「染膳」が出てきました。あのような鮮やかな色は、古代から出せていたのでしょうか。また、それぞれの色には何か意味があるのですか。 / 「染膳」に関して、緑のものを「青」と表現するナレーションがありました。今でも緑を青とする言語文化はありますが、おん祭りが確立された当時、現在の緑に相当する色彩感覚はなかったのでしょうか。 / 神に供えられるお米や木の実、染め物・盛り物などの供物には、いったいどのような意味があるのでしょう。

「御染御供」のことですね。これは、春日大社に伝わる特殊神饌のひとつです。神に供えられ、本来は直会の場で神人共食に供される神饌は、もともとは個々の神社の特性に基づいて供献されていました。簡単にいえば、山の神には山の幸、海の神には海の幸が供えられていたわけです。しかし、律令国家の成立と神祇祭祀制度の整備、物産の流通ネットワークの拡大によって、神饌にも画一化や形式化が生じてきます。現在古代から命脈を保つ神社に特殊神饌=同社独特の神饌として伝来されているものは、長い歴史のなかで多少の変質を経ながらも、画一化に抗して維持されてきたものと考えられます。「御染御供」は、米を赤・青・黄に染めて円筒に貼り付けたものですが、元来の神饌が地域の産物を供えて豊穣を謝するものであったとすれば、色彩的に装飾しようとする発想は仏教の影響を受けている可能性が高いと思います。恐らく仏教の五色=赤・青(緑も同色とされます)・黄色・白・黒(紫)か、中国の五行の色彩=木/青・火/赤・土/黄・金/白・水/黒に準えたものでしょう。