先生は、人間が自然を制圧して共生してゆくという意味ではなく、お互いがそのまま共生してゆくことが可能だと思いますか。また、その意味での共生が困難だとしても、これから人間はどのように自然と付き合ってゆくべきだと思いますか。

文明が永久に拡大・発展を続けようとするその傾向に歯止めをかけ、生物多様性の維持された環境が現状より悪化しないよう、注意してゆくことが理想です。そのためには、生態系に対するより深い研究と、ある程度の管理的介入が必要となるでしょう。しかしそれは、自然に対する傲慢を生んで、近代と同様の失敗をもたらす危険性がある。そのため歴史学は、過去の情況を具体的に復原し、人間の横暴に対する警告を発してゆかねばならないと思います。ただし現実には、政治や経済、社会のあり方が複雑に絡みあうなかで、理想の遂行は困難でしょう。「小さな失敗」をやむをえず繰り返すなかで、徐々に軌道修正できればよい方でしょうか。ともかく、「大きな失敗」だけは起きないよう、最大限の努力を払わねばなりません。それは、地球に暮らすあらゆる生命の滅亡を意味するかもしれませんので。