近代までの日本の景観に草地が多かったとすると、いまあるたくさんの樹木はどこから来たのでしょう。 / いくら日本列島の自然の回復力が強いからといって、さんざん使い込んだ挙げ句に放置しても、自然に戻ることができるのでしょうか?アフターケアも大事ではありませんか?

人間が手を加えることで現状を維持していた森林などは、その「保全」の取り組みを止めてしまうと、様々に綻びが生じて植生が変質してゆくことになります。それは、生きている樹木ならば当たり前のことで、草木の生まれては死んでゆくさまが繰り返されるうち、何度も植生が移り変わり(「遷移」という)、最終的には最も環境に見合った林相=極相を形成するに至ります。その過程を「山が荒れた」云々という人がいますが、それは、遷移の一形態や極相を「あるべき姿」と位置づけて正当化し、それ以外の状態を「正常な状態から外れるもの」とマイナス視する偏見に過ぎません。もちろん、抵抗力の弱まった森林に山火事が発生したり、虫が大量発生した大規模な枯死が生じる、といった事態は問題視すべきです。しかし、先に述べたような価値観を共有しなければ、人間による自然管理はあまり意味を持たないと思います。現在の里山における森林拡大は、多く植林ではなく自然の回復力に拠っているのです。