農業技術の発展に、気候の温暖化が関係していると知って驚きました。それ以外に、温暖化によって新たに生まれたもの、発展したものはあったのでしょうか。

古い時代でいえば、例えば漁業の発展です。現在の日本の食文化には魚食の占める割合が大きいですが、その基礎が作られたのが、温暖化の環境変化に適応しようとした縄文の食文化なのです。氷河期が終了して気温が上昇してくると、これまで大型哺乳類が跋扈していたツンドラは消えて森林が繁茂し、後退していた海面は上昇して内陸部へ入り込み、各地に「入り江」が形成されるに至りました。縄文の人々は、大型哺乳類の消滅によって得られなくなった栄養分を森林の堅果類(クリ、ドングリなど。煮沸によってでんぷん質を分解し、エネルギー源としうる)に代替する一方、春は入り江周辺に集住し魚介類の捕獲に勤しんでいたようです。かつては水田を小魚の漁場にもしていたらしく、九州などには未だにその痕跡が残っています。