宮崎駿は、高畑勲の礼賛した人と自然の共同作業=里山に対し、人に触れられていない自然、触れさせない自然を描いた。「原」風景という意味では、後者の方が優れた作品といえるでしょうか?

そうですね、『もののけ姫』に登場するシシ神の森は、屋久島等々に取材して造型したものですから、できるだけ人間が足を踏み入れられないような、畏怖すべき自然の姿を描こうとしたのでしょう。しかし結局、ラストではシシ神の森はなくなって、里山にみるような明るい草地が広がる世界となってしまう。余りにも明るいのでハッピーエンドにみえるのですが、これは畏怖すべき森林が消えコントロール可能な草地になってしまったことを表しており、サンとアシタカが分かれて暮らさねばならないことをみても、一種のバッドエンドなのです。もちろん、主人公2人の生き方に希望は託されていますが…。