草木成仏論についてですが、樹木が伐採される際に、それらの成仏を願う儀礼などは存在したのでしょうか。

以前にここに書いたと思うのですが、在来の神祇信仰の文脈で、伐採した樹木の精霊を精霊の世界へ送る祭儀は存在しました。現在でも普通に斎行されていますし、大規模なものは神社の式年造替で行われています。伊勢神宮出雲大社式年遷宮諏訪大社御柱祭などは有名ですね。仏教に限ったことでいいますと、各地の寺院に「草木供養塔」なるものが存在しています。読んで字のごとく、草木の成仏を願って建てられたものです。とくに中近世以降、動物や植物、そして無生物である道具などについて、このような供養塔が盛んに建てられてゆくことになりました。これも一種の正当化ですが、いずれにしろ、日本人的なメンタリティーを表現しているのも確かでしょうね。