当時の「鬼」についての認識ですが、鬼も一種の神としてイメージされていたのでしょうか。だとすれば、神/鬼の根本的な相違はなんですか?

「鬼」という漢字の原義は死体で、転じて死霊、祖霊を指すようになりました。日本ではこれにオニという訓を付けますが、これは陰陽の陰=ヲンを表すとか、さまざまな説があります。角を生やして虎のパンツを履いて…といった常套的イメージができあがるのは、鬼に地獄の獄卒の姿が重なり、さらに陰陽道の鬼門の方角=東北=丑寅(ゆえに牛の角に虎のパンツ)が単純に具現化された中世以降のことです。平安時代の鬼は、人知の及ばない化生のもの、神霊のなかでも人間に災禍をなすものの総称(厲鬼)とみられていました。神との相違は曖昧な点も大きいのですが、神は常に祀られている存在、鬼は祀られていないがゆえに災害をもたらす存在という区別はあります。ただし、神も祭祀の仕方を間違えたり、祭祀を怠ったりすると災害=祟りを起こします。