日本では、狼も犬も昔から存在したと思うのですが、「飼育する」という文化はあったのでしょうか。 / 狼と犬とはやはりイメージが異なると思います。犬には親近感しかないのですが…。 / 狼を改良して作った犬が神聖化されるのが少ないのはなぜでしょう。人が「自らの手で作った」という認識があるからでしょうか?

かつて、犬の祖先はジャッカルであると考えられていた時期もありましたが、現在では狼説が主流です。ハスキー犬やカラフト犬など、とくに北方系の犬には狼の血が色濃いようであり、狼の人に飼われたことを確認できます。日本では、近世以降に幾つかの記録がありますが、狼害の史料と同様、果たして本当に狼だったのか、野生化した犬ではないのか、確認することができません。近世以前の記録に確証を得るのは難しいようです。なお犬については、日本でも古代には神聖化されていた時期があります。大化改新のところでも話をしましたが、犬に辟邪の能力があると考えられていたためです。しかし、中国で犬を蔑視する傾向が強くなったために、恐らくは日本もその影響を受け、マイナス・イメージが強くなったものと思われます。将来された漢籍などを通じて、「犬」という字を用いたマイナス・イメージの言葉などが伝わったためでしょう。平安時代には死や血を忌避する穢れ観が強固になりますが、人々の目に付くところで、犬が人や獣の死体、糞尿などを貪り喰う様子が観察されたことも原因と考えられます。