モンゴルのオオカミ崇拝といえば、チンギス=ハンの蒼きオオカミと白き牝鹿の話ですが、父親がオオカミなのはよいとして、母親がシカなのはなぜでしょうか。

遊牧民族であるモンゴル族にとっては、鹿は狩猟によって得るものであり、やはり野生の象徴です。鹿の角は大地の豊饒を表し、美しい毛皮は、衣服や敷物の料として重宝されました。以前にお話ししたチペワイアンがカリブーを、インディアンが山羊を神聖視したように、モンゴルでは鹿が神聖視されたのでしょう。雄狼に対する牝鹿という対照は、やはり狩猟と性的イメージとの結びつきを想起させます。