オオカミがキリスト教世界で差別的扱いを受けていたとすると、「ベオウルフ」などの物語はどう捉えられていたのでしょうか?

ベオウルフは、熊の解説の際にもお話ししたように、bear-wolfであり、「熊狼」を意味します。こうした英雄叙事詩は、ゲルマンの神話や古ヨーロッパの信仰に取材していますので、むしろキリスト教が排撃した多神教的要素を色濃く残しています。熊であり狼であるベオウルフは、人間を超越した存在であるがゆえに英雄なのであり、ドラゴンを倒し偉大な王となりうる。同じ「熊」の名を持つアーサー王も同様の存在です。