私は武蔵野に住んでいますが、平地だということをほとんど意識することなく、今日まで過ごしてきました。そういう場合でもやはり、山や海の近くで暮らしてきた人と考えが変わる、ということがあるのでしょうか?

「ほとんど意識していない」という点が重要なのです。すなわち、人間の感性や感覚、思考様式などは、多く自然環境や社会環境によって無意識に構築されているのです。例えば、山や海のある変化の豊かな自然環境に暮らしていれば、それだけ多くの植物や動物、頻繁に変化する気候に取り巻かれているので、それらに対し敏感になり、また知識も多く持つようになります。共同体の取り決めや社会慣習、衣食住の文化も変化に富んだものになり、人間の結びつき方も多様になります(漁村地域など、海を介して遠隔地と繋がっているので、周囲を親戚、分家が取り巻いている平地的人間関係と異なり、周囲には血縁がおらず極めて離れた地域に親戚が点在していたりします)。現代は、交通や情報流通の発達により、以前ほど環境に基づく社会的・文化的相違は小さくなってきましたが、それでも日常生活の微細な部分から大きな相違がみられます(坂に対する感覚、とかですね)。友達どうし話し合って、違いを探してみるのも面白いかもしれません。