先祖供養などで親族が集まることがありますが、そのような場は〈物語り〉のための大切な場所と理解してよいのでしょうか。

法会・法要などの場は、古代から物語を生産する場所として重要でした。日本最古の仏教説話集である『日本霊異記』には、そうした場でなされたらしい、故人顕彰の要素を含む経典の例証話が多く収録されています。現在でも、法事のあとの会食の場で、故人をめぐる物語りの多くなされるのを耳にします。『平家物語』を挙げるまでもなく、物語ることには鎮魂の機能・意味が付与されてきたわけですが、故人をめぐってなされるプラス/マイナスの物語りは、遺された人々が故人を客観視し、また深く考える契機になるものと思います。