今回の『遠野物語』を検証・解説するにあたって、様々な書物にあたっていらっしゃいましたが、先生は、予め書きたい内容を想定し、それから関わりのある書物を読むのですか? 先に幾らかの書物を読んで、それから書く内容をまとめるのですか?

両方ですねえ。20年余りも研究を続けていますと、自分のなかに様々な蓄積もありますので、テーマに沿ってある程度の仮説は立てられますし、どんな本を読めばいいかも分かります。しかし、改めて調査を進め、史料や研究文献を読んでいるうちに、その仮説が覆り、新しい世界がみえてくることもよくあること。また、それが学問の醍醐味でもあります。自分の枠組みのなかで作業が進んでしまうことほど、(楽ですが)つまらないことはありませんね。