亀卜や風水を行うとき、生きた亀を殺して用いるのでしょうか、それとも死んだ亀の甲羅を探してくるのですか。生きた亀を用いる場合、その肉はどうしたのでしょうか。
亀甲にしても牛や鹿の肩胛骨にしても、屠殺してすぐの状態では脂質その他の層に覆われているため、焼灼に適しません。殷代においては、周辺の従属地域から卜府ともいうべき官衙に納められた甲骨を、一定の期間保管して卜占用に整形し、使用したことが判明しています。実験考古学の成果によるところでは、上記の脂質を取り除くのに最も良い方法は、1ヶ月ほど地面に埋めて微生物による分解に任せることのようです。殷代にそうした方法が採られたかどうかは分かりませんが、卜府に保管している間に何らかの処理が行われたのは確かでしょう。ちなみに、卜府自体にはすでに甲骨の状態になったものが運び込まれたと思われますが、少なくとも牛については、肩胛骨を採るためだけに1頭を潰してしまうのは経済的に問題なので、食用もしくは祭祀用に用いられたと考えるべきでしょう。亀は、多く体長20センチ前後のクサガメ・ハナガメなどが用いられているので、肉がどこまで使用されたかどうかは不明です。