仮説として提示された土偶祭式について、実際に類似の祭儀や呪術は歴史的、あるいは民族学的に確認できるのでしょうか。

〈殺された女神〉自体がそうですが、やはり一種の供犠の形式を採るものでしょう。供犠は読んで字のごとく、神霊に対し犠牲を捧げ、その破壊を以て神霊の活性化、あるいは秩序の樹立などを図る祭祀の形式です。ユダヤ過越の祭、それを踏まえたキリストの磔刑などは、供犠の典型といえるでしょう。土偶祭式の場合、その身体は神霊に対してではなく、人間の共同体に供されます。その意味では、動物の主に対する送り儀礼イヨマンテの類など)に近いといえるかもしれません。