ギルガメシュ神話では、蛇が不老不死を奪う存在として登場しますが、『古事記』では、ニニギが磐長姫を帰してしまったことが原因とされます。石というものに、古代の日本人は不死の意味を投影していたのでしょうか?

そうした心性は間違いなくあったようです。例えば、天皇の住む宮殿を祝福する「宮讃め」の表現のなかには、「底つ磐根に宮柱太知り立て」といった常套句が必ず出てきます。地下の岩盤に堅固に柱を打ち立てて、といった意味です。また、宮讃めが御代讃めに転じるなかで「堅磐に常磐に」といった常套句も出てきますが、これは天皇の治世の永遠性を磐の堅固さに託して表現したものです。神が宿る自然物に磐座が多かったことも、そうした意識の表れでしょう。