平将門は、プリントだけみると災厄をもたらす存在とされていますが、現代の祭りなどでは神の一人として、むしろ地元の人に尊敬されています。これは「伝説」としてでしょうか、それとも「神話」としてでしょうか。

「太古の起源」という要素を重視するなら、厳密な意味では「神話」ではないでしょうね。しかし授業で紹介したバルトのような定義を採用するなら、平将門の歴史的部分が多く捨象され関東救済の英雄へアプリオリ化されているという意味で、「神話」ということができるでしょう。ところで、死者の霊を「災厄をもたらす存在」と考えることはマイナスの印象しかなく、当時の人々はこれを畏怖し忌み嫌っていたようにみえますが、死者が災厄をなすとの認識は、一方で死者の怒りや苦痛に対する共感の結果であるともいえるのです。将門の霊を恐れていた人々は、彼の無念に同調していたということです。そうした点からすると現在の将門観は、彼の尊厳を無視した表層的な信仰、まさに「其の鬼に非ずして祭るは諂ふなり」に近い態度といえるかもしれません。