「都市伝説」について質問なのですが、これは現代において発生した新しいジャンルと思っていいのでしょうか。また、都市伝説は同時多発的に起きるものなのか、メディアを通して伝播するのか、どちらなのでしょうか。

「都市伝説」は、アメリカの民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンが用いた「urban legend」の翻訳語です。従来の民俗学の術語に従うなら「世間話」の範疇に入るもので、とくに新しい現象というわけではないと思います。ただし、一般に「都市伝説」と呼ばれているものの特徴としては、怪奇なことや残酷なことを強調する話、国家や国際社会の関わる陰謀論、マス・メディアをソースもしくは喧伝媒体としていることなどが挙げられ、いずれもアメリカ文化の影響を顕著に受けたものです。ブルンヴァンの著作『消えるヒッチハイカー』『ドーベルマンに何があったの?』などには、現在日本で語られているような話の原型が多くみられます。映画やテレビ、小説、ラジオなどを通じてアメリカン・フォークロアが広く浸透してゆく際、日本にもともとあった物語の形式を利用しながら、日本人にとって面白いように、分かりやすいように変更が加えられていったものと思われます。かつての中国文化の輸入と、まったく同じ現象が起きているといえるでしょう。