古来から現代まで続く話を、ひとつの言葉で定義づけることは難しいと分かりました。個々によっても、どれに分類できるか見方が変わります。また、将門に因んで「飛梅伝説」などがありますが、明らかに作り物と分かります。このような話も、意味があって作られたのですか。

飛び梅伝説」は菅原道真ですね。『拾遺和歌集』初出の和歌「東風吹かば にほひをこせよ 梅花 主なしとて 春な忘るな」が起源でしょうが、梅は当時中国文化を象徴する雅な華でもあったので、道真の文化人としての先進性を体現していたともいえます。日本では草木に対する感受性が中国よりも強かったようで、主に当初は天台宗のもとで、樹木も人間と同じように自ら発心・修行し成仏するという草木発心修行成仏論が語られてゆきます。また挿花など、祭礼に際し季節に応じた草花を身に纏う習俗も存在しました。主を慕って梅が飛ぶとの考え方は、なるほど将門の首が体を求めて飛ぶ、体が首を求めて彷徨うといった発想にも通じます。憶測にしかなりませんが、飛梅も、植物に対する豊かな感性を背景に、道真に対し同情しその鎮魂を願う心理によって形成されてきた伝承であるといえそうです。