地質学上、日本での最も古い稲作の地層と朝鮮半島での最も古い稲作の地層とでは、日本の方が遙かに古く、稲作は朝鮮半島から伝わったものではなく、そのような認識は戦後の自虐史観から来たものであると読んだことがあります。これは本当でしょうか?

岡山県の彦崎貝塚から出土した、プラント・オパールの件ですね。戦後歴史学の成果を「自虐史観」として否定したい人たちからみれば、格好の宣伝材料であり、またナショナリズム的な優越感を満足させるに充分な意義を持つものでしょう。しかし、そうした形でこの報告を利用する人たちは、概ね調査概報か新聞記事程度の内容を鵜呑みにし、学問的な態度で調査・検証をしているわけではありません。近年、縄文中期・後期に遡るような遺跡・遺物から、イネの存在や稲作を推定させるようなプラント・オパールが検出されているのは事実ですが、未だ上層からの混入の可能性、オパールを含み込む土器自体の型式の新しさ、オパールからイネの品種を精確に区別することは可能なのかとする批判などもあって、しっかりした学説的裏付けがとれない情況のようです。確かに、朝鮮半島を媒介せず、江南もしくは山東などから直接的に流入した可能性もあるわけですが、弥生時代の主流となる総体的な稲作文化が山東朝鮮半島に由来することは確かで、仮に縄文中期・後期に江南から稲作の伝来があったとしても、限られた時期に衰滅してしまった可能性が高いように思われます。