集落ごとの交渉はどのような形で行われていたのでしょうか。何を交渉材料として、どのようなコミュニケーション方法を採っていたのか気になりました。

基本的には交易だったと思います。経済社会学者のマルセル・モースが立証したように、前近代社会には贈与のシステムが存在し、贈与を受けた側には返済の義務が生じ、それが遵守されることで社会の平和が保持されていたと考えられています。現在の日本文化における、お歳暮やお中元などの贈答もその延長線上にあるものです。ある集落が他の集落と同盟関係を結びたい、あるいは協力関係を結んで貴重な水源を活用したい、金属資源や金属器を入手したいといった場合、相手の欲しいものを交渉によって供与する。労働力から始まり、繊維製品や樹木資源、食料品その他さまざまな場合があったでしょう。その意味で、あらゆる集団に大きな需要があるような金属、宝石その他の威信財、稲作農耕の先進的知識・技術を自由に入手・提供できる共同体は、多くの政治的連携を得て強固な勢力を構築できたと思われます。