レヴィ=ストロースによるオイディプス神話の構造分析で、男女の性愛によって人間が誕生するとの事実を否定するという要素がありましたが、こうしたことは日本の神話などにも共通する考え方なのでしょうか。

男女の性愛を比定するようなベクトルは、神話のなかでも後世的なもの、国家が国民のアイデンティティーを維持・強化すべく作り上げた段階の神話や、倫理や道徳が意図的に盛り込まれた芸能・芸術段階の神話などにみられます。授業でお話ししたオイディプスなどは、後者の例といえるでしょう。しかしより時代を遡った段階の神話が、性愛への否定はほとんど現れておらず、むしろ崇拝・信仰する形となっています。日本神話では、イザナキ・イザナミの兄妹=夫婦神が性交して日本列島を生み出したことになっています。縄文からこの神話の時代に至るまで、男性象徴のオハゼ形、女性象徴のホト形など、性器を象った石製品・木製品・土製品などが、祭祀具もしくは信仰の対象としてたくさんみつかっています。