オイディプス神話の構造分析を聞いて、ヨーロッパの思考は二項対立的要素が多いように感じました。日本にはそうした考え方はないのですか?

構造主義の考え方では、人間は現実世界から自分にとっての環境を構築してゆくとき、二項対立のモデルを使って世界を分節すると考えられています。確かにそうした視角でみてゆくと、ヨーロッパ以外の前近代社会にも、多くの二項対立的構図をみることができます。天と地、太陽と月から始まって、火と水、男と女など、例を挙げれば切りがありません。アジア的世界観として西洋的なものと対置される風水なども、その根底には陰陽五行説が存在しますので、陰/陽の二元的な把握の仕方をしていることは間違いありません。前近代と近代とが明確に違うのは、実はその内容です。前近代の場合は、二項対立であっても、その二項の間には優劣の差がなく、置き換えも可能であると考えられています。これに対して近代の場合は、二項それぞれの性質は不動で置き換えはできず、場合によってはプラス/マイナスの価値付けが大きくなされてしまう。自然/文化の二元的把握などは、その典型といえるでしょうか。