洪水を避ける呪術が逆に水災を呼び寄せるものと受けとめられたとのことですが、授業で触れたような占い、呪いを生業にする人々がいたにもかかわらず、なぜこのような自体が起きたのでしょうか。

呪術や占いに対するものの考え方、知識、技術などは、時代や社会との関係のなかで、やはり長い時間をかけて変化してゆくものです。例えばやはり『周礼』の段階から記載があり、日本まで受け継がれてゆく追儺という祭儀があります。これは、年末に宮廷において邪な鬼気を排除するもので、辟邪の権化として方相氏という存在が登場し、邪鬼を追うパフォーマンスを行いました。しかし日本では、9世紀になると、鬼を追っていた方相氏が逆に追われる立場になるという変質が生じます。これも、上記の血の問題などと同じ、本質的には強力なエネルギーの両義性に関わる問題でしょう。