宮内庁が天皇陵の調査に許可を出さないのはなぜですか。

いろいろ複雑な問題が絡んでいます。まず天皇陵は天皇の祖先たちが葬られる墓地であり、日本国の象徴である天皇家のプライバシーを侵害するというのが建前的な理由でしょう。そのプライバシーは個人の尊厳に関わるものではなく、国家の尊厳に関わるものです。それとともに、やはり大王家・天皇家のルーツが考古学的に解明されてしまうことは、そのまま『日本書紀』などに描かれた国家創出の歴史=神話が、解体され相対化されてしまうことを意味します。古代神話を根拠にアイデンティティーを形成している不思議な近代国家、「日本」の根幹を揺るがしかねない事態を招きます。ぼくなどは、それこそが「普通の国」になる第一歩だと思いますし、歴史学研究者の団体と宮内庁との会合のなかで次第に公開が進んではいるのですが、まあ全面公開に至るのは難しいでしょう。