「朱」という色には、中国で何か特別な意味があると聞いたことがあります。施朱のような風俗は、他の国にもあるのでしょうか。

辰砂やベンガラ(酸化鉄)と呼ばれる赤色顔料、すなわち丹や朱を辟邪のために用いる、という発想は多くの国の文化にみることができます。とくに水銀は防腐剤としても使用されたので、単に太陽や血を連想させるだけでなく、実際の効果から辟邪の考え方に繋がった面もあります。中国の神仙思想においては、水銀は不老不死の妙薬(仙丹)ともされ、歴代の皇帝も服用していました。そのなかには、水銀中毒で亡くなったのではないかと疑われているものもあります。なお、陰陽五行説では赤は火徳の色であり、南方、夏などとも結びつきます。相剋説・相生説に基づけば、木徳(東方、青色、春)より生まれ、土徳(中央、黄色)を生み出し、金徳(西方、白色、秋)を克し、水徳(北方、黒色、冬)に克されるということになります。色にどのような意味があるのか、時代や文化によってどのような相違点があるのかを調査することは、非常に面白いですね。