そもそも、なぜ人は地下を異界とする認識に至ったのだろう。空に異界を考える発想がないのも不思議である。

天上にも他界は設定されています。後の『古事記』にみる高天の原が代表的ですが、古墳に鳥型木製品が立てられていることからすると、古墳時代に天上他界観もあったのかもしれません。ちなみに黄泉国が地下に設定されているのは、まずは人間を地下に埋葬するという風習(古墳自体は地表より高い位置の埋葬となりますが)に基づくのでしょうが、「黄泉」という表記にも表れているように、中国の地下世界「黄泉(こうせん)」が影響を与えているのかも分かりません。ちなみに『古事記』には、冥界の呼び名として「根国」もみられますが、これはヤマト王権の他界が最初に設定された紀伊国が、樹木の繁茂するがゆえにキノクニ=木国であったことにも由来します。「木」国の地下なので、「根」国なんですね。