禁足地というものが全国に分布していますが、やはりこれも「見るなの禁」のような神話伝承に基づくのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。禁足地として最も典型的なのは神体山ですが、その成立過程をみますと、面白いことが分かります。まず縄文時代において、人々はかなりの高山へも狩猟のために入っていたことが確認されます。しかし弥生時代になると、200メートル級の丘陵などで祭祀が行われ、それ以上の山々へは人間の生活痕跡がなくなってゆきます。古墳時代を経過し、そうした山々のなかから神体山、禁足地が生じてゆくのです。これは、人々の生業に占める狩猟活動の割合の低下と、平地の耕地化によって、神聖領域が日常生活圏の外部へ追いやられていったことを意味します。禁足地の成立は、開発の展開と呼応しているわけです。