三角縁神獣鏡ですが、回賜品とはいえ、作りかけその他で少しくらい中国に残っていてもおかしくないと思います。偽造説などはないのでしょうか。また、量産されたとしたなら、その際にベースとなったものはないのですか。

この点は、本当に学説が分かれ議論が続いています。授業でも紹介しましたが、三角縁神獣鏡はすべて日本で作成されたとの見解もあります。また、三角縁神獣鏡よりも早くに副葬が確認される画文帯神獣鏡などが、量産のベースになったのではないかともいわれています。いずれにしろこれらの研究は、多様な形式で作られている三角縁神獣鏡を、その多様性を無視して一括して扱いすぎのように感じます。銘文のあるもの/ないもの、銘文の様式、文様の形式やその彫刻・鋳造の精度など、さまざまな観点から分析が必要です。文様の様式論など、中国に残る銅鏡との図像学的な比較研究も必要でしょう。