説話に出てくる動物について、生態系のなかでの序列が反映しているように感じたのですが、今日みた『捜神記』では、別に影響していないようにも思われました。どうなのでしょうか。

『捜神記』に限らず、神話・伝説・昔話の類に出てくる動物には、生態系的序列はさほど反映されません。ただし、人間からみて注目すべき動物がピックアップされることは確かです。例えば、縄文の狩猟採集文化から存在したのではないかと推測される〈動物の主〉。山野河海のそれぞれの自然領域を象徴するような動物が〈主〉とみなされ、人間と契約を結んだり種々の交流をします。山にはクマ、森林には猪、沼沢には蛇、海にはサメ・シャチなどが当てられていたようです。縄文時代は、死と再生の信仰のなかで多産の猪が支配的表象になり、弥生時代は、稲作の展開のなかで地霊的位置づけをされた鹿が支配的表象になる、といった主要な生業や社会の変化のなかで注目される動物が変転することもあります。この種の動物は、現在の調査によって得られた民間伝承の類にも多く登場します。例外ももちろんありますが、特徴的な動物が選択されることは確かでしょうね。