沖ノ島は外国の人々によっても祭祀されたとのことですが、渡来人も、日本に来る前に信じていたものがあったはずです。解釈の相違をめぐる軋轢などなかったのでしょうか。

アジアの宗教的態度は、シンクレティズムが基本です。すなわち、他を排斥するような宗教に入信しない限りは、複数の神的存在を違和感なく信仰しうるということです。アニミズム世界においては、森羅万象のすべてに神霊が宿っており、人々は時と場合に応じて種々の方法で神霊と接してゆきます。ときには祭祀し、逆にときには修祓を行いますが、その方法が神格の固有性において変化することもありえます。よって沖ノ島の場合にも、渡来の人々は、自分が通行する土地(この場合は海ですが)の神として、礼を以て接したものと思われます。