中大兄らによって、入鹿の首が飛ばされている絵をみたことがあります。あの絵は創作なのでしょうか。

あれは『多武峯縁起絵巻』で、鎌足を祭神とする談山神社奈良県桜井市)の縁起絵巻です。暦仁2年(1239)、同社の学僧永済が草案縁起絵を作成しており、現存本はこれをもとにした16世紀中頃以前の写本とみられています。内容的には、鎌足の伝記を主体に、長男貞恵による鎌足墓所の移動と妙楽寺談山神社前身)の創建などを記すものです。問題の入鹿誅伐の場面は、佐伯連古麻呂・稚犬養網田を率いた中大兄が剣を揮い、入鹿の首を落としており、鎌足は弓を持ち、矢を背負って立っています。ほぼ『家伝』に基づくものと思いますが、情景は王朝物語風に描き変えられ、入鹿の首が飛ぶなど演出が過激になっています。いずれにしろ後世の想像によるものです。