仏像から涙や血などが流れ出ると不吉なことが起こる、という内容の物語を知っているような気がするのですが、なかなか思い出せません。もしご存知でしたら教えてください。

授業で一言だけ触れましたが、仏像霊験譚の形式ですね。中国の南北朝期には、仏像が発汗して凶事を知らせる類の言説が多く作られましたが、これが後に涙や血へ姿を変えてゆくようです。善導『往生礼讃』に書かれる三品懺悔の手法には、目から涙を流して行うのが下品の懺悔、目から血を流し全身の毛穴から汗を噴き出して行うのが中品の懺悔、目からも毛穴からも血を流して行うのが上品の懺悔とありますが、血と汗と涙は関連する表象なのです。日本で「血の涙」が出てくる早い例は、寛保2年(1742)厚誉春鶯『扶桑怪談弁述鈔』巻1―88に載る、「延文四年ニ興福寺ノ釈迦ノ像、眼如血変ゼシ事ナド、年代記ニ見ヘタリ」などでしょうか。現在は、血の涙を流すマリア像の方が有名ですが、この表象はもともと仏像のものですね。