従軍慰安婦に関して、虚偽と証明された吉田証言以外には、どのような証拠があるのでしょうか。 / 文献ではなく、口頭の証言は証拠として認められないのですか。

むしろ、このような質問が出なければならないような情報環境にあることが、大問題といわざるをえません。いわゆる「慰安婦」関係の種々の著作に当たってみれば明らかなことですが、まず日本軍が現地で横行する兵士の強姦行為などを抑止し、また性病対策や機密漏洩対策などのために、自ら占領地域に慰安所を建てていったことは、軍の公式記録の形で数多く残っています。また、慰安婦自体を捏造と喧伝している同じ自民党の大御所、中曽根康弘元首相も、海軍主計大尉時代に率先して慰安所を設置したことを手記に証言しています(『終わりなき海軍』)。すなわち、慰安婦慰安所が軍の制度として存在し、日本や朝鮮、台湾、そして占領現地から女性たちが集められ、働かされたことには疑いの余地がありません。歴史修正主義の政治家や各種学者たちは、それでも「強制連行を示す証拠はない」と反駁するのですが、慰安所における過酷な性的労働の実態、それゆえの死亡や逃亡の記録も残っていることからすれば、軍による募集・召集自体のなかに強制性があったことは自明でしょう(勧誘の際、労働の実態を偽装した詐欺紛いの手法が採られたことも分かっています)。近年の歴史学では、いわゆる書かれた史料だけではなく、口述証言をも重視するオーラル・ヒストリーが盛んですが、これを含めれば強制の証拠も枚挙に遑がありません。日本や中国、韓国から名乗り出ている元慰安婦の女性たちはもちろん、元日本軍兵士たちの証言、オランダ・フランス・中国・フィリピン・アメリカなどの検察団が現地調査を行った、大量の記録が残っています。なお、これらで語られる被害のなかには、2000年代の日本の裁判で事実認定をされたものも存在します。講義でお話ししているような「実証史学」の立場に立てば、出てくる結論は自明すぎるほどに自明です。主要な史資料はデジタル化され、こちらのホームページに掲げられていますので、自分の目で確認して下さい。