「啓蒙」という言葉が出ましたが、以前カントの『啓蒙とは何か』を読んだとき、理性に従って正しく行動するということを学びました。それは、この歴史意識とどう結びつくのでしょう。

講義で触れた「啓蒙」は、まさに近代化と軌を一にするもので、前近代の旧弊を打破し近代の開明を喧伝することを意味します。福沢諭吉などはそうした啓蒙思想家の代表ですが、彼の文明史が国民の知徳の集積による歴史の展開を構想するものとすれば、啓蒙=知徳の開発こそが国家を発展させる鍵であり、歴史叙述もその重要なツールのひとつということになります。歴史を正確に知っているか否かが、「理性に従って正しく行動する」ことを可能にするのだ、ともいえそうです。