皇国史観において、なぜ天皇は神である必要があったのでしょうか?
皇国史観の考え方や成り立ちについては、次回詳しくお話ししますが、日本の近代国家が採用した立憲君主制の「君主」とは、政変や革命などにおいて容易に転覆しない不可侵の存在でした。君主のもとで政治を行う宰相が交替するのはよいとして、君主自身が、例えば明治維新で倒れた徳川幕府の将軍のような立場であってはならない。周囲に列強がひしめく帝国主義・植民地主義の時代、国家のありよう自体が次々に変転し混乱を生じてゆくことは、日本列島自体が侵略されてしまう危険を持つ。その意味で、不可侵の国体を体現する存在として、人間が触れてはいけない超越者としての神が志向されたのでしょう。古代において天皇が現御神と位置づけられていたことは、その点で非常に都合がよかったものと思います。