当時の人々は、天皇は神であるといわれることに、何も不自然さを感じなかったのでしょうか。

当時は、突出した能力を持ちながら非業の死を遂げた人々を神として崇めたり、あるいは特別な能力を持った人々を生き神として信仰する文化も存在しましたので、国家によって不可侵の存在として喧伝された天皇を「神」と認識することも、必ずしも不自然ではなかったのです。現在の我々はそうした事象、行為に対して疑問を感じますが、それは我々の知的枠組みが当時とは異なっているからであり、また「神」という言葉の意味内容も、微妙に食い違っているためと思われます。日本におけるカミとは、畏怖される存在でありながら、キリスト教的な神ほど超越的な性格のものではなかったのです。