天皇機関説についてですが、どこが国体明徴声明を出さねばならないほど問題だったのか、よく分かりません。

天皇が国家経営のための機関であり、制度であるということは、例えば近代的な国家概念のもとでは正しい認識といえるでしょう。しかし近代日本の目指した国体のあり方は、天皇自身を不可侵絶対の「現人神」に祭り上げることでした。こうした考え方のもとでは、天皇を制度とすること自体が不敬となります。キリスト教を奉じ信仰する社会にあって、神の存在を「宗教というシステムが必要とする偶像である」と宣言するようなものです。国体が明確化してゆくなかで、天皇機関説はそれと正面から対立する考え方になってしまったのです。